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情報大工のひとりごと

書籍と巻物



制作ツールにも向き/不向きがある____見出し罫線____

Microsoft Wordでマニュアルを制作する機会が最近あったのですが、そこでひとつ気がついたことがあります。それは、紙のマニュアルを制作するにあたっては、やはりページレイアウトソフトを使用するに越したことはない、ということです。
Microsoft Wordはいくら多機能とはいえ、所詮ワープロソフトです。ユーザーが実際のマニュアルで目にするように、ページを単位として作業したり、ページを見開きの状態で作業するようにはできていません。無理矢理ページ表示モードにすることもできますが、あの状態で作業するのはハッキリ言って無理だと思います。

ところで、なぜページを単位として作業したり、ページを見開きの状態で作業しなければならないのでしょうか?
それは、紙のマニュアルが商品の一部という部品であるだけでなく、書籍でもあるからです。書籍であるからには、ユーザーが実際に広げて見たときのことを考えて、1ページの紙面に対する情報量や、見開きページのデザインのバランスにも気を配らなければなりません。つまり、制作にあたってページを常に意識することが必要になります。
しかしワープロソフトでは、これらのバランスをとりながら制作するという作業が事実上できないのです。基本的に連続したテキストを、1ページあたりの分量という基準で切り分けることだけしかできません(それすら多大なノウハウを必要とするものですが)。
また、ワープロソフトでは、見開きページの中心にイラストを配置したレイアウトを採用できない、という致命的な欠点を見逃す訳にもいきません。ビジュアル中心のマニュアルが今後ますます要求される状況では、この問題は避けて通れないものでしょう。

Microsoft WordやAdobe FrameMakerでマニュアルを制作するという動きが、ソフトウェアメーカーの売り込みとも相まって最近活発なようです。確かにこれらのツールを用いて制作することで、導入コストなどの表層的なコストは削減できるでしょう。
しかし、やはりこれらのソフトは巻物制作ツールであって、書籍制作ツールではないのです(どのツールを使っても良いものを制作できることは事実ですが、無理して使いにくいものを使うより、使いやすいツールを使うに越したことはないでしょう)。
マニュアルがわかりにくいと嫌われて一般の攻略本が売れる背景には、内容的な問題に加え、現状のマニュアルが書籍として要求される品質に欠けているからではないか?とも思えるのです。

一般のユーザーに提供するマニュアルは、巻物をページごとに切り取った疑似書籍ではなく、最初から書籍として設計されたものでなければならないと思いますが、いかがでしょうか? (1998.08.19)



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