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情報大工のひとりごと

マニュアルの枠を超えていく電子マニュアル






マニュアルという分類の意味がなくなるとき____見出し罫線____

Webサイト上の情報提供をめぐる業務が最近多いこともあり、いろいろなことを考えます。
その中でもやはり一番意識することは、マニュアルで取り扱われているような情報が、独立したマニュアルとして提供される時代が果たしてどれだけ続くのかという問題です。このように表現すると、電子マニュアル化による紙マニュアルの置き換えや、インターフェースへの操作情報の統合などによるマニュアルの存在意義の曖昧化、というように理解される方が多いと思うのですが、気になる点はそこではありません。

問題は「Webサイトによる情報提供だけでなく、インターネットを利用したビジネスが一般化するにつれ、マニュアル的な情報が必要になる分野の比重が変わってくるのではないか?」という点にあります。わかやすく表現するならば、「プロダクツからサービスへという時代の流れと共に、マニュアル的な情報の展開方法が本質的に変わってくるのではないか?」ということになるでしょうか。
この辺の問題は当研究所が今後注力すべき事業分野になってくることは間違いないでしょうし、既にいろいろと画策しているものもあります。何かの機会にこういった話題も取り上げて行きたいと考えておりますので、ご期待ください。 (2000.06.05)




統合コミュニケーション____見出し罫線____

前回の「マニュアルという分類の意味がなくなるとき」がいまいちでわかりにくい、という声をいただいたので、もう少しだけ解説を加えたいと思います。
いままで企業がユーザーとコミュニケーションを取る場合は、ざまざまな媒体/手段を目的に応じて使い分けてきたことはご存じの通りです。例えばカタログ(製品情報)やマニュアル(操作情報)、テレビCM(企業/製品情報)、会社案内(企業情報)、お客様センター(サポート)などといったものがあげられます。

これらは今まで利用可能だったメディアの特性や限界からこのような区分けが出てきたわけですが、インターネットの登場と一般化によって、この区分けが曖昧になってきました。ネットの双方向性をうまく利用することで、情報のジャンルにとらわれて媒体/手段を切り分ける必要性が少なくなってきたわけです。
もちろん「電子媒体で提供してはならない種類の情報は紙で提供すべき」のように、電子マニュアルで話題となる制約は常につきまとうわけですが、対象が実際の世界(Atom)の製品から、ネット上(Bit)のサービスに変わってくるとどうなるでしょう?
そうなると、ユーザーに合わせてカスタマイズされた操作情報(今まではマニュアル)とサポート情報(同お客様センター)、追加機能を実現するための販促情報(同カタログ)などの情報が統合されて、同一画面で提供されるようになるのも時間の問題です。
ではそういう時代がやってきたときに、単体としてのマニュアルやヘルプにこだわる価値がどれほどあるでしょうか? というよりもむしろ、マニュアル制作を通して培った手持ちのスキルをどういう形で展開すれば、もっともユーザーの役に立つことができるのでしょうか?

こうした話が実は前回のテーマでお話ししようと思っていたことだったわけです。いろいろと考えている人にしてみれば、当たり前の話ですよね。
え?「最初からここまで書いてくれ」ですって? いや、やはり自分の頭で行間を読んでいろいろと考えないと(笑) (2000.06.12)




いままで以上に多面的な視点/スキルが必要になる____見出し罫線____

電子マニュアルがこのような形で発展していくと、既存のマニュアル制作技術の枠では対処しきれない面がかなり多く出てくることに注意を払う必要があります。
電子マニュアル制作にあたっていままで要求されていた制作技術に加えて、以下のような能力が必要となってくるでしょう。

  • 電子媒体上での広告やマーケティングについての基本的認識
    いままでは漠然としたターゲットユーザー像の設定という次元で話が済んできましたが、統合コミュニケーションの時代になれば、それではやっていけません。顧客とのコミュニケーション品質を向上させるにはどうすれば良いのか?というテーマを営業部門や企画部門とともに考えていくことが必要になる以上、共通言語として基本的な広告やマーケティングの常識は押さえておく必要が出てきます。

  • ビジネスマインド
    上記の話ともかぶるのですが、現状のマニュアル制作者は、ビジネスから離れた単なる物書きの意識で自己完結してしまっている人が多いように思えます。もちろん現状でもそれでは通用しないのですが、これからはさらに厳しくなるでしょう。
    もちろん、すべてに対してビジネス至上主義を持ち出すべきという話ではありません。しかし、そうした視点なしには直接のクライアントだけでなく、エンドユーザーにも魅力のある情報が提供できなくなる時代がすぐそこまで来ている、ということをもっと自覚する必要があるでしょう。

  • 何ができ、何ができないのかを適切に見分けられる能力
    素晴らしい可能性のありそうなものから、どう考えても怪しそうなものまで、新技術は次から次へと出てきます。そのなかで使える技術と使えない技術を見分けたり、技術のトレンドといったものをある程度把握したりといった能力が必要となります。
    「既存の制作技術をめぐる話でも、情報アンテナの感度が高い人とまったく駄目な人がいる」というのと同じ話なのですが、理解するための知識水準がまた一段上がるため、結構大変かもしれません(汗)。

「なに言ってんの? マニュアル制作者の仕事とは関係ないじゃない」「私はそういう方向には興味がない」と思われるかたもいらっしゃるかと思いますが、これが現実です。上記の問題は、最近の業務で特に痛感したことでもあり、当研究所では現在早急に対策を進めています。

確かに、既存の制作技術と紙のマニュアルがこの世からなくなることはありません。しかし、マニュアル制作に携わるものにとって、マニュアルを超えてエンドユーザーと直接コミュニケーションが成立する分野で活動したいというのは長年の夢だったのではないでしょうか。
やる気と能力さえあれば、その夢は実現できるところまできています。 (2000.06.19)



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