役割の変わる電子マニュアル

2000年11月13日

毎年恒例(笑)ではありますが、今年もTCシンポジウム2000の分科会「いま電子マニュアルに何が求められているか」で当研究所の所長が発表した内容をお届けします(今年の発表資料はあまりにショボ過ぎるため、資料を公開するかどうかは現在検討中です)。

電子マニュアル、最近の動向は?

電子マニュアルの導入が本格化したのはつい数年前です。導入当初はいろいろと混乱が見られたものの、電子マニュアルと紙マニュアルの担当領域は次第に明確になりつつありました。しかし最近になって、紙マニュアルと電子マニュアルの情報の切り分け基準の境目がどんどん曖昧になってきているように感じます。

その背景について考える前に、電子マニュアルの現在の動向をおさらいしておきましょう。

対象製品自体の変化による、電子マニュアルへの影響

前述したような電子マニュアルのフォーマットを、特性に合わせて使い分けているのが現在のところですが、製品の動向に合わせて電子マニュアルの形態も変わって来ています。製品動向の問題について考えるにあたっては、以下の3つのポイントを重視すべきでしょう。

こうしたポイントを考慮に入れると、全体的に製品やサポート情報、電子マニュアルはネットワークを前提としたものに移行するであろうことが想像できます。紙マニュアルと電子マニュアルの情報分類が曖昧化してきたのも、こうした背景によるものです。

情報提供手法の変化による、電子マニュアルへの影響

それではネットワークを前提とした製品/サービスに対する各種の情報提供のありかたは、どう変わっていくのでしょうか。この変化を説明するために、情報提供にあたって行うデザインの3つの段階という概念を提示したいと思います。

  1. インストラクションデザイン:
    紙マニュアルのレベルでは、操作仕様を手順や説明としてどう展開するか、ということだけが問題でした。出力環境が紙という固定された媒体なので、インストラクションをどういう順序で構成し、わかりやすく表現すれば良いかという問題に集中できます。
  2. インタラクションデザイン:
    しかし電子マニュアルでは、固定された出力環境というものは存在しません。表示領域も可変ですし、何よりも紙媒体と違ってユーザーが直接コントロールできない媒体を、どうやってユーザーにコントロールさせるのかを十分に考えなければなりません。
    つまり、インストラクションだけでなく、ユーザーとコンテンツの間のインタラクション(ナビゲーション、インターフェース)をどうデザインするかという問題意識が必要となってきます。
  3. コミュニケーションデザイン:
    これがさらにネットワークを前提とした電子マニュアル(例:メーカーのWebサイトの一部としての電子マニュアル)になってくると、電子マニュアルそれ自体がユーザーと企業との間の直接的なコミュニケーションツールとして機能するという側面も持つことになります。
    従って電子マニュアルが「メーカーとユーザーのコミュニケーションの場」として機能することになるため、コミュニケーションをどうデザインするかという問題意識も必要となってきます。ここまで来ると各種マーケティングやブランドマネジメントといった領域に直結してきますので、既存のマニュアル制作の方法論ではカバーするのは不可能でしょう。

現在の電子マニュアルは、インタラクションデザインからコミュニケーションデザインへの移行が始まっている段階ではないかと思います。ネットワークというものが特別なものでなくなるにつれて、移行のペースは上がってくるのではないかと想像できます。

今後必要になる観点とは

さて、このように電子マニュアルがコミュニケーションツールとして変貌を遂げるとどうなるでしょう? おそらく次のような役割が電子マニュアルに課されることになると考えられます。

もはや独立したマニュアルではなく、メーカーがユーザーに対して行うコミュニケーションの一環として、他のツール(会社案内、TVCF、カタログ、サポートその他)と統合されてくる、というわけです。統合コミュニケーションデザインとでも言いましょうか(心ある人は以前からこうした考えかたが重要ということを、ことあるごとに主張してきたのですが . . . )。

そうなると既存のマニュアル制作組織の見直しや、ビジネスの再構築も必要になってくるでしょう。おそらく、以下のポイントくらいは押さえておく必要があるでしょうね。

どんどん厳しくなってきますね(笑)。で、あなたはどうしますか?

いかがでしたか?

某筋から得た情報によると、かなり物議を醸した発表だったようです(苦笑)。電子マニュアルに移行するかどうかのレベルでさえいろいろと問題を抱えていることが多い現状では、ちょっと刺激が強すぎたかもしれませんね。

でもWebサイト制作に携わっているかたは、いつもこうしたレベルで日々活動されているわけで . . . 。「我々にはテクニカルコミュニケーション技術が」なんて言ってても、何もできないんではお話になりませんからね、マニュアル業界の皆様(自省を込めて)。

トップ | 新着情報 | 研究発表 | ひとりごと | 業務案内 | ご意見箱 | リンク集
このサイトについて | ご意見・ご感想はinfo@laplace-lab.orgまでお寄せください
©1996-2003 ラプラス取説研究所
ラプラス取説研究所のトップページに移動
#
新着情報のページに移動
#
研究発表の一覧ページに移動
#
情報大工のひとりごとに移動
#
ラプラス取説研究所の業務紹介ページに移動
#
ご意見箱に移動
#
リンク集に移動