携帯電話はWebコンテンツのあり方を変えるか?

2007年2月27日

iPhoneの発表を契機として、携帯電話のUI改善をテーマとした話はいろいろと出てきましたが、携帯電話がWebコンテンツに与える影響という観点の話はほとんどなかったように思います。この問題について昨年から考えていたことを少し整理して、皆様のご意見を伺ってみたいと思います。

といっても、多分それほど目新しい話はなく、おそらく車輪の再発明ばかりでしょうけれども…。まあ当たるも八卦、当たらぬも八卦(笑)

携帯電話を巡る気になる傾向、そして経験

携帯電話を巡る環境として気になっているのは、以下のような事象です。

起こり得る変化と前提条件

これらの事象を踏まえると、以下のような変化が起こって来るのでは?と想像することも可能です。

ただし、この変化が現実のものとなるには、以下の問題が改善されていることが条件となります。

これらの問題が解決されれば、間違いなくユーザーの行動が変化します。デバイス側の問題に関しては、iPhoneという解決例が商品レベルで提示されたこともあり、デバイス側の改善ピッチは速まることになるでしょう。

あとはコンテンツ側がどう動くかです。コンテンツ側の動きによっては、この2〜3年で状況は大きく変わるはずです。携帯電話専用サービスではない一般のWebサイトであっても、携帯電話による閲覧ユーザーがかなりのシェアを獲得するのではないでしょうか。

変化が現実になった場合は

さてこのような変化が現実となった場合の話ですが、無意識のうちにPCの存在を前提としていたWebサイト閲覧のようなサービスでも、実際の利用者の姿が変わってくることになります。したがってコンテキストを踏まえたWebサイトの全体設計のみならず、個別ページに関してもこれまでとは異なった形での最適化が要求されることになるでしょう。

例えばCMSを利用する場合でも、大元のコンテンツ作成の際に、携帯電話への最適化が優先されるようになるかもしれません。(携帯電話用の専用サービスや専用UIを用意しているものを別として)現状のWebサイトはPC環境での閲覧を前提としたものがほとんどですが、今後はメーカーの製品情報などに関しても、携帯電話での閲覧が前提となる可能性もあります。製品ジャンルによっては、すでにそういう動きがあってもおかしくないでしょう。

このような変化に対応する上で問題となりそうなのは、「携帯ユーザーはリテラシが低く、PCユーザーはリテラシが高い」「WebサイトはPCで閲覧することが当然」「家庭内にPCがあるのが当然」というような、いわゆる情報強者の思い込みでしょう。特に情報の提供側に回っている企業やコンテンツ制作者にこの傾向が強いのですが、このような思い込みは百害あって一利なしです。気が付いたらPCレスが当たり前の世界に変わってしまっていて、今現在の情報強者だけが置いてきぼりにされていた…ということがないようにしなければなりませんね(笑)

そもそも今のPCの姿なんて、せいぜいここ20年の話です。ひょっとするとPCの存在など、コンテンツ制作や(広義の「仕事」を含めた)情報加工以外の用途では不要となる…のかもしれません。機密保持や内部統制などを理由として持ち帰り仕事の制限が厳しくなると、自宅にPCを置いておく意味はさらに減るでしょうからね(ホワイトカラー・エグゼンプション(怖)が導入されたり在宅勤務制が拡がると、逆の流れになるかもしれませんが)。

おまけ:ゲーム機によるWebサイト閲覧

最後にゲーム機によるWebサイト閲覧についてですが、こちらに関してはそれほど留意する必要はないと考えています。

Webサイト閲覧という行為はプライベートに属するため、個人が閲覧環境(表示デバイス=TV)を占有できる環境になければ、ゲーム機でWebサイトを閲覧しようとはしないでしょう。占有できることを前提としたデバイス(個人PCや携帯電話)で閲覧しようとするのが自然ですし、ブックマークなどの継続性やメールの受信環境との一体性などを考慮しても、複数のデバイスを頻繁にスイッチして閲覧することはユーザーにメリットが少なく、現実的ではないと思われます。

その意味で、wiiチャンネルがプライベートな情報ではなく、家庭内で共有できる/共有することが自然な情報を中心にセレクトしているのは、インターネットTVという発想から抜け出せない家電メーカーと比較して正しい判断だと言えるでしょう。共有されることを前提としたwiiチャンネルのコンセプトは、リビングルームにおけるWebサイト閲覧に適したサービスとして、このまま定着する可能性もありそうです。

いかがでしたか?

(いつものことながら)あえて極論に振ってますが、別にPCの世界がなくなると主張している訳ではありません。それに閲覧対象となるWebサイトの性格によっては、携帯電話によるWebサイト閲覧シェアの増加なんて関係ない、というところも当然出てくるでしょう。基本的には、情報の提供者側が判断すべき事項かと思います。

最後にもう一点踏まえておくべきキーワードとしては、今更感がありますがFMC(Fixed Mobile Convergence)でしょうか。デバイス側の進化によっては家庭用PCの市場が侵食され、Webサイト閲覧シェアが大きく動く可能性もあります。ただFMCも「いつになったら…」というキーワードなので、実際に動き始めてから考えるということで十分かもしれません。

いずれにせよ、まずは高機能化した携帯電話に対してどう向き合うのか?が最重要課題です。この2〜3年のうちに情報の提供者側/コンテンツ制作者がどのような答えを出すのか、注目してみたいと思います。

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