前回はハードウェア用語を取り上げましたが、今回は「OS用語」です。ここにも初心者泣かせの用語が . . . 。Mac OSとWindows95を対象として、ちょっと考えてみましょう。なお、これは「どちらが優れているか」という話ではないことを、あらかじめお断りしておきます。

なお、以下に登場する機能名、用語については、各社の商標ならびに登録商標のものもあります。また、以下の文章は、その商標ならびに登録商標を保持する個人ならびに団体に対して、その名誉を毀損するためのものではありません。

質問1:プロパティって何ですか?

初心者泣かせの用語の筆頭としては、Windows95に登場する「プロパティ」をおいて他にはないと思います。スペルアウトすると、Propertyです。普通の人に「プロパティってご存知ですか?」と聞いて、何人が的確に答えられるでしょうか?

こんな用語が[ファイル]メニューをクリックすれば登場し、右クリックしても登場するのでは初心者はたまりません。そもそも、マイクロソフト社は「プロパティ」という単語をどう定義しているのでしょうか?

オブジェクトにはカラー、サイズ、および変更された日付といった外観や状態を定義する何らかの特徴または属性がある。これをプロパティと呼ぶ。プロパティは、オブジェクトの外部的、あるいはビジュアルな特徴には限定されない。スペルチェックユーティリティで、スペルの候補を自動的に表示するオプションなどのように、オブジェクトの内部状態、あるいは動作状態を反映する場合もある。

「Windowsユーザーインターフェースデザインガイド」
(Microsoft Corporation著、(株)アスキー発行)

だそうです。はっきり言って理解不能です。定義自体の問題以前に、日本語になっていません。では「プロパティ」英語の意味そのものから、理解の助けは得られるのでしょうか?

財産、資産、所有物、所有地、所有権、特質、特性、小道具

「英和中辞典」(研究社)

普通のひとが知っている用語ではないですね。誰もが使うことを念頭においたOSに適した用語には思えません。もともとのユーザーインターフェースガイドラインの定義をもう少し明確にしたうえで、OS自体のローカライズをやり直すよう提言します。

「プロパティ」とは厳密な定義は異なると思いますが、Mac OSでは「情報を見る」という、まだわかりやすい名称を採用しています。マイクロソフト社のInternetExplorerで採用された「お気に入り」(英語版ではFavorite)は秀逸だと思いますし、ローカライズには他にやりようがあるはずです。

質問2:ランチャーって何ですか?

スペルアウトすると、Launcherです。上記の「プロパティ」に対して、「ランチャー」という言葉は多少親しみがあります。なぜならロボットアニメや自衛隊の装備などで、「ロケットランチャー」という単語がよく使用されたからです(笑)。といってもあまり良い単語とは言えませんね。Windowsしか使ったことのない方に説明すると、これはMac OSの機能の1つで、アプリケーションソフトなどを登録しておけるウィンドウのことを呼びます。ウィンドウの中のボタンをクリックすると、対応するアプリケーションが起動します。

ところで、この単語には「わかりにくい」というレベルとは別の問題があります。人によって呼びかたが異なるのです。ソフトバンク社のMacUser紙ではローンチャと呼びます。別のところではラウンチャーという呼びかたをする人もいます。つまり「ランチャー」という言葉が、外国語のLauncherの発音と全く異なっているのです。これでは、外国語の意味を知っている人でも、理解するのが困難になってしまいます。

「ラプラス取説研究所のローカライズ原則」の提案

ここまで「プロパティ」と「ランチャー」という言葉を対象として考察してきました。わからない用語がこれだけかというと、そんなことはありません。エイリアス、リソース、タスクバー...。その気になれば、これらの用語の考察だけで何年かかるかわかったものではありません。そうしてみると、個別の用語に対して問題を指摘するのではなく、用語の命名法自体の問題の明確化、そしてローカライズ原則の提案をしたほうが、問題の解決の助けになると思われます。

さて、ここまでの考察で、「良くない用語」は以下の項目のいずれかに該当していることが明らかです。

  • 外国語を単にカタカナ化して使用している(ローカライズの手法として、あまりに安易すぎます)。
  • 元の外国語の意味がさっぱりわからない(百歩譲ってカタカナ化を認めても、元の外国語の意味がわからないようなものをカタカナにしてはいけません)。
  • 元の外国語の発音と異なっている(百歩譲ってカタカナ化を認めても、元の外国語の発音と著しく異なる表記にしてはいけません)。
  • 日本語として意味をなしていない(日本語にすればよいという問題ではなく、ユーザーが直感的にわかる用語を使用するべきです)。

つまり、安易なカタカナ化と日本語として意味をなしていないことが主な問題になるわけです。この現状問題を踏まえて、当研究所としては、以下の4項目の「ラプラス取説研究所のローカライズ原則」を定義しようと思います。

  1. 外国語を安易にカタカナ化しない。
  2. カタカナ化する場合は、言葉として広く流通しているものに限る。
  3. カタカナ化する場合は、元の発音を尊重する。
  4. 日本語として、ユーザーが直感的に理解できる用語を使用する。

これらの原則を守ることで、ローカライズ絡みの用語の問題は回避できるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

いかがでしたか?

このホームページ上ではようやく、当研究所独自の理論が登場しました(笑) 次回はこの原則を元に、ソフトウェア用語についての考察と、用語問題のまとめをしてみようと考えています。

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