去る5/9に日本語版が発売になったことで、ようやく日本でも実用段階に入ったPDF(Portable Document Format)について考えてみましょう。このコラムで扱うのですから、当然マニュアルや取扱情報を提供する手段としてのPDFを考える、ということになります。
PDF自体についてはご存知の方が大半だと思いますので、今回は軽いおさらいをして、実際にどう使い、どう作るかということに関しては、次回以降に考えてみたいと思います。

PDFって何?

PDFとはPortable Document Formatの略で、アドビシステムズ社が提唱したファイルの保存形式です。アメリカでは公文書の半数以上がPDFで保存されているという話もあります。
では、ただのファイル保存形式であるPDFが何故これほどまでに普及したのでしょうか? ご存知のかたも多いとは思いますが、主な特長をおさらいしてみたいと思います。

  • どのアプリケーションソフトで作成した書類もPDFにできる
  • HTMLなどと違い、閲覧者の環境でレイアウトが左右されない
  • フォント情報の埋め込みもできるので、使用フォントまで再現できる(ただし現在は1バイト文字のみ。日本語などの2バイト文字については次バージョンで対応予定)
  • 作成環境、閲覧環境ともプラットフォームに依存しない
  • ベクトルデータなので、拡大/縮小表示も自由自在
  • 閲覧に必要なAdobe Acrobat Readerは無償配付されており、必要に応じて再配布もできる
  • 必要に応じてPDF書類にプロテクトをかけられるので、著作権を保護できる(Adobe Acrobat Exchange使用時。例としてパスワード制限、プリントアウトや編集の禁止、などのプロテクトを設定できる)
  • PDF Viewerプラグインを利用することで、インターネット上でPDF書類を閲覧できる
  • インターネット上にリンクを設定できる
  • 動画や音声などを埋め込むこともできる

大体こんなところでしょうか。これだけでもかなり魅力的なフォーマットであることがおわかりいただけるかと思います。これ以上の詳細についてはアドビシステムズ社のWebサイトをご覧ください。

マニュアルとPDFの関係は?

以上のような特長を持ったPDFですが、マニュアルとどう関係があるのでしょうか?
結論から言うと、実はおおありです
PDFを利用することで、作成したマニュアルのデータをネットワーク上で共有/流通できるという可能性が生まれます。わざわざ紙マニュアルの内容をネットワークで共有/流通してどうするの?という疑問をお持ちのかたもいるかと思いますので、以下に主なメリットを説明しましょう。

  • イントラネットにマニュアルのPDFデータを持っていれば、サービス部門からすぐにマニュアルの情報を確認できる。
    サービス拠点すべてに、すべての機種のマニュアルをそろえているのはとても大変です。
  • パソコンのマニュアルの場合、マニュアル自体をハードディスクにプリインストールしておくという大技を使用できる。
    ソニーのVAIOノートでは、すでにやっているようです。HTMLでプリインストールするならば、オーサリングの手間で発狂してしまいそうです。
  • WWWで公開することによって、購入前のユーザーに事前に機能を確認してもらえる。
    石丸電気など良心的な電器店では、売り場にマニュアルを置いてあります。良いことばかりのカタログと違い、マニュアルにはユーザーが知りたい本当のことが書いてありますから、購入前調査に役立つこと請け合いです。情報公開という面でもユーザーにアピールできます。
  • 誤記があったり、出荷直前にソフトウェアの仕様変更があった場合に、最新版をWWWに置いておくことで、ユーザーに正しい情報を提供できる。
    かなり後ろ向きなメリットですが、実はわれわれマニュアル制作者、ユーザー双方にありがたい特長なのではないでしょうか。

実際はWWWで最新情報を流すとしても「すべての人がPDF書類を見られる環境にいるわけではない」、「最新版をユーザーの費用負担でダウンロードさせるのは道義上問題があるのではないか」などといった、さまざまな問題が予想されます。
また、ネットワークだけではなくCD-ROMに焼いてデータを配付、といった方法も考えられます。
上記の例は、あくまで「PDFによって、ユーザーにも利益がある方向で、マニュアルの作成データの使いかたの幅が広がる」ことを示すためのものだということをご理解ください。

PDFを使ってみよう

では実際にPDFを利用してみましょう。
閲覧するだけならばアドビシステムズ社のWebサイトからAcrobat ReaderをダウンロードすればOKです。ネットワーク上に置いてあるPDF書類をご覧になるには、お持ちのWWWブラウザのプラグインフォルダにPDF ViewerをインストールすればOKです。
実際にPDF書類を作ってみるには、Adobe Acrobat 3.0Jが必要です。欲しい方はパソコンショップに走りましょう。 

さて、これからPDF書類を作成するに当たっての問題などを考えていくわけですが、とても濃い話が続くので、次回以降のお楽しみとさせていただきます。
内容としては、

  • 画面で閲覧させるのか? プリントアウトさせるのか?
  • 著作権はどうする?
  • PDFといえどもヘルプの一種
  • プリインストールはしたけれども...

などなど、いろいろと考えております。ご期待ください。

いかがでしたか? 今回はPDFとマニュアルのさわりの部分という位置づけで進めてきました。次回以降はPDFを有効に使うためには何が問題となるのかを考えていきたいと思います。

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