Adobe Acrobatの日本語版が導入されてから、ちょうど1年になります。PDFは思ったよりも急速に普及してきたように見えますが、普及の過程でその長所とともに短所も明確になってきたように思えます。

このあたりの事情をPDF自体の問題と、PDFをマニュアルにどう使っていくのかという問題に分けて、今回と次回の2回に渡って検討を加えていきたいと考えています。今回はPDF自体の問題について検討してみましょう(「PDFがやってきた(1)」「PDFがやってきた(2)」「PDFの可読性を考える」もあわせてご覧いただくと、全体像がより明確になるかと思います。あわせてご覧ください)。

PDFの現在

まず、現状でPDFがどのように使われているかを見てみましょう。

  • PDFによるオンラインマガジン
    1.デザイナーの意志を忠実に反映したレイアウトをユーザーに届けられる、2.Webとの高い親和性、3.プラットフォームに依存しない、といったPDFの持つメリットを生かした、新しい形態の情報提供を目指したものです。
    しかし現状の通信インフラでは、たとえページごとの分割ダウンロード方法を採用したとしても、やはり重いことは否めず、「マガジン」というタイトルで期待するような読みかたはとてもできません。
    また、ユーザーが使用する表示デバイスの物理的なサイズによって読みやすさが制限されてしまう、という点にあまり注意を払っていないところも見受けられます。一度に全画面表示ができないと、Acrobat Readerの操作性の悪さもあって、とても画面上で読める代物ではなくなってしまいます。
  • 製品スペックシート他の提供
    1.紙でレイアウトしたDTPデータの活用、2.Webとの高い親和性、3.プラットフォームに依存しない、といったPDFの持つメリットを生かしています。
    必要な部分だけを確認するには便利ですが、やはり紙のカタログのようには使えません。たいていは紙媒体で使用するためのDTPデータをそのまま使用しているため、画面上で見ると問題が出るためです。また、現状の表示デバイスは解像度が不足しているため、質感がいまいち表現しきれないところは、カタログとしては辛いところです。
    そうはいっても、紙媒体のカタログなどが入手できない環境の人のことを考えると、素晴らしい使い道であることは確かです。販売店で死蔵されるカタログの量を考えると、資源の節約にもなります。
    FAX送信フォームをPDFで配付して、ユーザーにプリントアウトしてもらうという手段でPDFを活用しているところもあります。この方法を使うと、ユーザーに必要記入事項を明確に伝達できる上に記入場所も指定できるため、あとでまとめるときに便利だと思われます。バーコードを入れておくとどこからダウンロードしたかの管理までできるので、これもなかなかうまい活用法だといえるでしょう。
    最近のマイナーバージョンアップで追加されたフォーム送信機能やJavaScriptとの連係機能を使用することで、この種の使用法はますます増加することが予想されます。
  • マニュアルの提供
    一番いろいろなパターンがあるのがこれでしょう。PDFで作成したマニュアルは現在、1.インターネットなどのネットワークを通して配付・参照させるもの、2.何らかの媒体(例:CD-ROM)で配付されたローカルで閲覧するためのもの、の2通りがあります。
    1.に関しては、上記のオンラインマガジンや製品スペックシートなどの場合と同じ特徴を活用していると言えます。しかし、2.に関しては、PDFをコンテンツリッチな電子マニュアルを作成するための1ツールとして活用しているという側面も持っています。
    マニュアルに関しては他にも問題がいろいろあるので、次回に詳細に分析することにします。
  • 原稿のチェック
    いつもお世話になっております(笑)。
    電子メールに添付したり、ネットワーク上で転送することによって、相手先に限りなく原物に近いイメージを届けられます。
    これでいままでのように、何十枚も紙を浪費してFAX送信することはなくなりました。相手が海外の場合には、ありがたみが倍増します。
    最新版を常にアップロードしておけば、「最新版の××ページはどうなっているか?」という疑問とも無縁です。提供する側/される側で同一のイメージを、(いろいろな意味での)負荷を少なくして共有できるツールとしてのPDFの威力は絶大といえるでしょう。
    あとはPDFファイル自体にどう赤字修正を入れるのか(赤字原稿がFAXで戻ってくるのであればペーパーレストは言えないです)、複数の人が入れた赤字の内容をどう共有するのか(注釈入りのPDF書類が複数来たときに、自動的に注釈を1つのPDF書類にまとめられるか)、といった問題を解決する定番ツールが確立されれば、この用途でのPDFの地位は確固たるものになるでしょう。

以上4通りが、現状でPDFが活用されている分野だといえるでしょう。
当初注目されていた、ムービーの貼り付けといった、マルチメディア関連機能がほとんど使用されていないことにご注意ください。

やはり、どう見えるかが問題

こうして現在の使われかたを見てみると、一部の用途を除いて、PDFにはやはり表示デバイス上でどう見えるのか、という問題が付きまとっていることがわかります。もっとも、電子ドキュメントの標準を目指しているPDFには、ある意味で当然の問題でもあります。
最初からプリントアウトして使ってもらうことを前提としないのであれば、表示デバイス上でPDF書類がどのように見えるのかについて、PDFの作成者がもっと良く検討しておく必要がある、というのが当研究所の見解です。

まず、ページ単位で1画面に全体が表示される必要があります。
閲覧ソフトのインターフェースが良ければ、それほど苦にしなくてもよい問題なのかもしれませんが、現状のAcrobat Readerでは画面の外にある文字を読むための操作が誤操作を誘発するため、できるだけ画面の外に文字があるという状況は避けなければなりません。

また、文字ということでいえば、やはり全体表示にしたときに12ピクセル四方の文字の大きさ(Windows: 9pt.、Macintosh: 12pt.)が必要だと思います。OSで使用する文字サイズでも、最低これくらいのサイズは取っています(明確に判別できる漢字を構成するには、12ピクセル四方以上が必要だと思われます。機会があればフォントメーカーの方に意見を聞いてみたいと思います)。
PDFでは文字を表示するときにアンチエイリアスをかけるので、12ピクセル四方というのはあくまで最低条件として考える必要があります。アンチエイリアスがかかると文字はひとまわり小さく見えます。

その上で、以前「PDFの可読性を考える」で検討した、見た目の文字の大きさにも留意する必要があることは言うまでもありません。

いかがでしたか?

今回は日本語版1周年を迎えたPDFの、現状の使われかたと問題点について検討してみました。どちらかというと現状の再確認という意味合いが強い研究発表となりました。次回はPDFでマニュアルを提供するときに注意すべき点、現状の問題点について検討する予定です。

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