事業者の狭間で揺れ動く用語

2002年6月 6日

マニュアル制作の立場にいるとよく見えるのですが、一般消費者がインターネット接続に必要な設定をする際の意外な難関、それはプロバイダや通信機器メーカーによって用語がバラバラ、という奴なのです。例えばA社では「ダイヤルアップパスワード」、B社では「PPPパスワード」、C社では「接続パスワード」と同じ用語に異なった名称をつけています。同じものが様々な呼称を持っているのですから、サービスを利用するユーザーは混乱するばかりです。以前TC系のMLでこの問題が話題になったこともありましたが、解決策に向けての妙案がなかなか存在しないというのが頭の痛いところです。

簡単な解決策が存在しない理由としては、包括的な業界団体の不在がまずあげられます。事業領域の特性か、ネットワーク絡みのサービスや製品を巡っては、ベンチャー系や海外事業者の日本法人など様々な背景を持つ種々雑多なプレーヤーが市場に参加しています。そのため、事業者を包括して用語の統一を図ることのできる機能を持つ団体が存在しないように見受けられます。ある程度の統一がとれている用語でも、そういった用語選定が存在することを知らない(積み重ねがない)プレーヤーが、用語を混乱させている面もあるでしょう。市場の状況を踏まえないローカライズによる問題も大きいのではないかと思われます。

これだけでは後発参入組だけが悪く思えるかもしれませんが、先発の大手どころも責任はかなり大きいのです。大手どころの一番の問題は、他社模倣を良しとしない文化にあります。ほとんど同じなのに小手先だけ字面を変えるなど、変な部分で自社プライドを大事にする習慣です(知的財産権絡みで安易に模倣できないということもあります)。さらに、最近は機能名に対する商標申請など、悪い意味で用語を自社内へ囲い込む傾向が目立つように思えます。

サービスなり製品なりがスタンドアロンで使用されるものであれば、それでも良いでしょう。ですが、ネットワークなど様々な事業者が入り乱れて様々な製品やサービスを提供する領域であれば、わかりやすく適切な用語を積極的に共有するという文化が必要なのではないでしょうか。自社のプライドにこだわって難解であるという印象を消費者に与えるよりも、現状はまだまだ市場全体のわかりやすさを向上させるべき時期だと思うのです。特にこれからはホームネットワークだ、ユビキタスコンピューティングだとネットワークを利用したサービスが全盛を迎える訳ですから、一昔のAV製品レベルとまではいかなくとも、それなりのわかりやすさを市場全体で実現してほしいと切に願います。

そういう意味で、先日の「ルータベンダー4社『日本ホームゲートウェイ連絡会』発足へ」(BroadBand Watch)というニュースは、業界団体による用語統一の第一歩として期待したいところです。

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