情報大工のひとりごと

「家電製品考」記事の一覧

デジタル家電雑感(20040112)

2004年1月12日(この記事のみ表示

2004 International CES開催に伴い、デジタル家電絡みの話がまとめて出たので、ちょっとクリップ。

  • Hi-MDが登場(AV Watch記事)して、これまでのMDベースのオーディオ機器はそのまま移行することになるでしょう。でもHi-MD専用メディアは旧MDプレーヤーで再生できない訳で、後方互換性問題を回避するためのデザインをどうするつもりなのか、メーカー各社のお手並み拝見です。
    まあそんな些細なことよりも、ライブラリの一部を切り出して持ち歩けるようになった(Walkman)→ライブラリをすべて持ち歩けるようになった(iPod)という状況で、「ライブラリを交換式の物理メディアに切り出す」という行為の持つ意味が今後どのように変わっていくのかが、一番気になるところです。交換式の物理メディアの将来を示すことになりそうな予感...。
  • PSXから家電のUI革新が始まるとは思っていましたが、「早くも来たか」という感じです(AV Watch記事)。
    でもTVと録画画像、音楽、写真(PSXはこれにゲームが加わる)というトップメニューって、なんか違和感あるんですよね。「できること」とUIの刷新感を前面に出したいという意図だけが上滑りしていて、ユーザーの操作を無駄に1ステップ増やしているというか。デモ機能としてはともかく、現状レベルではリモコンボタンを使った直接切り替えだけで十分だと思うんですけど。
  • 中核となるホームステーションは家電セントリックとPCセントリックのどっちでも良いから(PC Watch記事)、変な形でコンテンツ(またはコンテンツサーバ)を囲い込まないで欲しい過去記事)と思うことしきり。と言ってるそばからアレな構想(PC Watch記事)が...。
    ところでホームネットワークに関しては「個人で使用する時間と家族で共有する時間で利用シーンや利用するコンテンツが異なる」という散々言い尽くされた議論があるわけですが、その辺のコンテクスト違いを明確に踏まえた企画って実はほとんどないような気がします。このジャンルの製品に感じる中途半端さの原因は、その辺にあるのかも。

業務多忙が当面続くことが見込まれる関係で、このようなクリップ&雑感形式の記事が多くなりそうです。「濃さ」はともかく「らしさ」は維持していきたいと思いますので、お見捨てなきようお願いいたします。

バイオノート505エクストリーム

2003年11月13日(この記事のみ表示

初代505か...。何もかもみな懐かしい(謎)

というわけで、先日発表されたバイオノート505エクストリーム(PC Watch記事)。以前「他社の出方だけを見守るような上辺だけの商品戦略・商品企画ばかり」と書いた手前、この手の商品はポジティブに評価しない訳にいかないでしょう。価格設定の関係で絶対的な台数は出ないかと思いますが、商品企画へのアプローチには素直に賛同したいです(ZDNet記事)。筐体の素材の選択も良い感じです。付属ドキュメント類も凝っているとのことで、当研究所的には一回どこかで現物を見ておきたいところです。

ただ惜しむらくは、せめてネットワーク周りだけは絶対に内蔵してほしかったように思えます。たとえ標準付属品であっても、外付けパーツなしにネットワーク接続できないスタンドアロンというのは、今の時代にはちょっと...という気も(人によっては全然気にしないでしょうけど)。それでもこういう特化マシンが1台くらい市場にないとつまらないですから、次につなげるという意味でも、下世話な揚げ足取りで潰してしまうような行為は控えた方が良さそうです。他のメーカーさんにも、「おおっ」と思わせるような商品をどんどん出して欲しいですしね。

そうそうもう一点。この手のマシンを買う人は、持ったときの満足のためにも素材感を優先して、SonyStyle専用モデル(カーボンファイバー積層板仕様)の方を購入すると思うんですよね。だからこそ、カーボンファイバー積層板仕様はSonyStyle専用ではなく、店頭販売品としても出すべきではないかと思うのです。モノ造りへのこだわりを見せるなら、やはり多くの人に店頭で見てもらうことを考えないと。ひょっとすると、両者を並べると標準モデルがしょぼく見えてしまうのを嫌っただけかもしれませんけど(笑)

さて明日はW3C Day、来週月曜日はセマンティックWebコンファレンスとそっち系の情報収集に励む予定です。知識ネットワークというものをどのように捉えているか、最前線の方々の考えを把握しておこうと思います。でも、オントロジに過剰な期待はできないと個人的には思うんだけどなあ(ぼそ)

コンテンツサーバーを切り離せないかな?

2003年11月 6日(この記事のみ表示

デジタル家電へのアプローチは各社様々なのですが(参考記事)、いまのところデジタル家電ネットワークのコアとなるべきホームサーバーに関しては、どうも多機能重装備(TVチューナー+HDD+DVDレコーダー...)志向が強いように思えます。

ですが、本当にこの路線で決まりなのでしょうか。個人的な見方ではありますが、いわゆるホームサーバーという概念で想定されている機能のうち、コンテンツサーバーの機能を分離独立させるという手もあるように思います。つまり、コンテンツサーバーは単純なNAS形態+αで十分では?という発想です。将来的な拡張の容易さや故障時の対応を考えても、こちらの方がユーザーの利便性が大きいのではないでしょうか。

PC上の映像ファイルを再生できるDVDプレーヤーが発表されたとのことですが、これがPC上のファイルではなく、(家庭内)ネットワーク上のコンテンツサーバー上のファイルを利用するというイメージになります(もちろんPCからもコンテンツを利用できるというのは、当然の前提です)。家庭内ネットワーク上に存在する機器からであれば、いつでもどこからでもコンテンツを利用できるという訳です。で、サーバー内のコンテンツにアクセスするためのUIはそれぞれの製品側に持たせる、と。

個別製品へのUI設計&実装でコストがかさむことや、複数ユーザー(端末)によるNAS側の同時使用の負荷対策などを考えると、簡単には行かないかもしれません。ですが、この方向であれば、デジタル家電に対する主導権争いで、ユーザーが被害を被ることは少なくなるはずです。コンテンツサーバーを分離してしまえば、ユーザーを囲い込む(既存資産で縛りつける)ことは困難になりますからね。

もちろんこうした製品が主流になるにはメーカー間の相互接続性の問題が解決されている必要がありますし、なによりもDRM(デジタル著作権管理)との兼ね合いを調整する必要もあります。ホームネットワークにPCを介在させるかどうかが問題になる原因のほとんどは、このDRM問題にあるわけですし。ただ、PCがこれだけ普及して家庭内に入り込んでいるにも関わらず、PCをホームネットワークから排除するというのは本来おかしいと思うんですよね。ユーザーの利便性を損なわない程度にコンテンツ運用の柔軟性を維持できるような、うまい落とし所を見つけて欲しいところです。

最近の家電製品に関していろいろと

2003年10月27日(この記事のみ表示

CNET Japanに「CE Linuxは松下を変えるか」と題した、興味深いインタビュー記事が掲載されています。ネットワーク時代を迎えて相互接続性が重要と認識しているのは、ユーザーにとっての安心材料となりそうです(でもその一方で、記録メディアという物理デバイス縛りは相変わらず...)。

ただし、以前から気になっている点に関して、「やはり」と落胆させられる部分もありました。

それは、皆同じものになってしまった結果、消費者への希求力がなくなってしまったのです。その原因として考えられることのひとつに、「OSからインターフェースまで、すべてを自社で作らなくてはならなかった」ということがあります。機能を網羅し、ニューモデルを出すので手一杯で、他社製品と差別化するところまではなかなか手が当てられなかった。

CNET Japan | 末松千尋・オープンソース戦略を探る:第1回 CE Linuxは...

これは違うでしょう?

なぜ「皆同じ」になったのかというと、メーカー各社が「差別化のための差別化」という、他社の出方だけを見守るような上辺だけの商品戦略・商品企画ばかりを取っていたからです(これは松下だけの問題ではないと思いますが)。現に同じ商品カテゴリーの製品を並べてみても、どれがどこのメーカーの製品かなんて全然わかりません。

実際に商品を購入しようとしても、特徴に注目した積極的な商品選びをできる場面はすっかり少なくなってしまいました。いまは必要に迫られて購入しなければならない場合でも、消去法による商品選択になってしまうことが多いのです。開発リソースの問題が解決されれば魅力的な商品が増えるのか?と考えると、とてもそうは思えません。メーカーの意識がこの程度では、楽しいお買い物はまだ当分お預けということになりそうです(もちろん、たまには「これは欲しい」と積極的に思えるような商品もありますよ。こんなのとか)。

この辺の問題は、

しかし、本当にそうしたマスマーケティングの手法だけが正しいのだろうか? すべてのWindows機ベンダーが、"マス"に向けて同じようなパソコンを出していくだけでは、ノートパソコンは今以上に良いものにはなっていかないように思う。

PC Watch | 本田雅一の週刊モバイル通信「家電メーカーより家電らしい? ...」

と指摘されてしまうことと、同じ背景を持つように思えます。

市場におけるプレーヤーは多いはずなのに、商品の本質的なバリエーションが限定されているのはとても不思議です。たまに限定的なヒットが出ると、すぐに模倣してその市場をみんなで食い荒らす。で、食い尽くしたら、また別の場所に大挙して移動していく。これではイナゴの群れと変わりません。メーカー各社は本当に「市場」を作る気があるのでしょうか?(そういう意味では、キーワード商売も同じことですかね)

先週A&Vフェスタ2003を見に行って、いろいろと(自粛)だったので、ちょっと荒れ気味です。ちなみに会場で見た製品で一番気に入ったのは、これです(去年の10月に発表されていたのに、なぜ今まで気付かなかったのか...)。こういった発声処理システムが、読み上げブラウザにも応用できるようになれば良いのですが。

PSPとかPSXとか

2003年9月 4日(この記事のみ表示

どのような形で発表されるのか注目を集めるPSP(PlayStation Portable)とPSXですが、PC Watchでソニーの久多良木さんへのインタビューが連載されています。発売されてから後出しジャンケンではつまらないので、気になる点について先に触れておきたいと思います。

まずはPSPについてですが、

第二のウォークマンにするぞと、僕だけでなくてみんな燃えている。

後藤弘茂のWeekly海外ニュース 久夛良木健氏が語る 次世代携帯...

のように、ウォークマンの再来を期しているようですね。

これはウォークマン(というか携帯音声再生機器)によって音楽が日常生活の一部になったように、ゲームや映画などの映像系のコンテンツも日常生活の一部にする、という意気込みと思われます。しかし、映像系のコンテンツが音楽のように日常の一部になることができるのかというと、個人的には疑問を抱かざるを得ません。ましてや携帯機器ですから、なおさらです。

これはなぜかというと、音声系のコンテンツは「ながら」で楽しむことができるのに対して、映像系のコンテンツを楽しむには、それなりに注意を集中する必要があるためです。また、携帯機器で楽しむコンテンツとしては、映像系のコンテンツは尺が長すぎることも問題となるでしょう。音楽の再生最小単位は一曲で5分程度ですが、映像系はどうでしょう? チャプター単位で区切ったところで、全体を連続して見る(操作する)ことを前提とするコンテンツでは、ちょっとしたときにでも気楽に楽しめるという、日常生活の一部として浸透することは難しいのではないでしょうか。逆に言えば、このような問題を解決する技術や企画(ハードウェア的にもコンテンツ的にも)を捻り出せるのであれば . . . ということになります。

次にハードディスクレコーダー市場で苦戦を強いられているソニー期待のPSXですが、UI面での革新に期待が持てそうです。というのも、

今(のDVD/HDDレコーダ)は、それが非常に低いレベルだから、GUIでEPGを見たり、録画した番組を早送りしたり、ブラウズしたりするのに、かなりストレスがある。 (中略)だったら、そこに、PS2の資産(チップセット)を使ってみようというのが、PSXの主眼。PS2の資産で、第2世代のデジタル家電を実現しようと。

後藤弘茂のWeekly海外ニュース 久夛良木健氏が語る、ポストVHS...

のように、UI面での優位をかなり意識しているように見えるからです(もちろん価格も含めた全体の商品力も、かなりのものになると思われますが)。

家電の設定系のUIは、ボタン(スイッチ)設定→表示パネル上でのメニュー設定→テレビ画面でのメニュー設定のように進化してきてはいるものの、方向ボタンと決定(取消)ボタンの組み合わせという基本はほとんど変わっていません。ですが、実は家電製品のUIでストレスの原因になっているのは、処理能力や表示能力ではなく、(方向ボタン+決定ボタンを使った)既存の選択・決定システムそのものにあるような気がします。現在の家電製品のように機能が増えてくると、操作手順が無駄に増える上に製品の機能全体の見渡しが悪くなり、選択→決定で画面遷移を行うメニューシステムの悪い面ばかりが目立ってしまうのです。

さて、PSXのUIはどのような方向に進むのでしょうか。処理能力を活かした魅力的な設定画面造りを行ったところで、それが既存の家電製品UIの体系をなぞったままでは、操作にストレスを感じる世界から抜け出すことは困難でしょう。せっかくのPSXの処理能力をUI設計にどう活かすのか、ソニーのUI設計チームの活躍に期待したいところです。

「情報大工のひとりごと」をMovable Typeベースに移行したこともあり、いわゆるBlogっぽいスタイル(笑)で記事にしてみました。更新負荷が少ない上に更新頻度も確保できるので、このスタイルの記事も今後増やしていきたいと思います。

電源周辺の互換性がなぜ問題にされないのか?

2001年4月11日(この記事のみ表示

あまり表に出てこないながらも、家電製品に関していつも疑問に思っている問題があります。それはACアダプターやバッテリーといった電源周辺部品の互換性がほとんど確保されていないことです。家の中に様々なACアダプターやバッテリーが散乱して、どれをどれに使って良いのかわからなくなって、途方に暮れたことはありませんか?

もちろんバッテリーの形状は筐体デザインに直結しているため、魅力的な筐体デザインを採用するためにバッテリーを特殊形状にしたり、機種毎に異なる形状にせざるをえないという面もあるでしょう。ACアダプターに関しても、必要な電力だけを効率よく供給できるように専用設計にした方が、製造物責任という観点からもメーカーにとって動作検証をしやすいことは理解できます。

ですが、筐体一体型の内蔵バッテリーならばともかく、それ以外の部品は外付けで交換可能なものです。各サイズが規定されている乾電池のように、ACアダプターやバッテリーも、汎用性のある共通部品化することはできないのでしょうか(最近のデジタルカメラは、乾電池サイズの市販充電池を利用できるものが増えています)。こうした部品を共通部品化することで、ユーザーにとっては古い部品を有効活用でき、別のメーカーの製品を購入したときでもわざわざ新品を購入する必要が減るというメリットがあります。

メーカーにとっても在庫管理が楽になるだけでなく、修理部品の保有コスト削減も期待できますし、マニュアルから余計な注意文を削除できる(笑)というメリットがあります。バッテリーは乾電池のように(ビデオカメラ用などの大きいものも含めて)複数の形状をあらかじめ規定しておけば良いでしょうし、ACアダプターについても端子部の色を(6Vは赤、9Vは青などのように)電圧と電流、そして極性ごとに色分けするなどすれば、ユーザーにもわかりやすい表示は十分に可能でしょう。「利幅が薄い本体だけではやってられん。割高な専用別売品を売りつけて収支を改善せねば」という現状があることも理解できますが、このような発想はユーザー不在であるだけでなく、環境負荷を考えても最早成立しえないのではないでしょうか。いくらリサイクル体制を整えたところで、無駄なものを製造すること自体をやめないのであれば、それは欺瞞に他なりません。

「ACアダプターの待機電力を大幅に低減する電源制御回路技術を開発」といった技術開発も重要ですが、もっと根本的なところにも各メーカーが目を向けてくれることを期待しています。 

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