今日は組織論についてのおすすめ本、戸部良一他5名による「失敗の本質 − 日本軍の組織論的研究」です。第2次世界対戦当時の最も洗練されていた官僚組織である日本軍の、組織としての意志決定システムおよび意志決定プロセスを分析することで、今日まで残されているであろう日本的組織の持つ問題点を浮き彫りにすることが本書のテーマです。

本書では、失敗した作戦にこそ組織の問題があらわれるという確信の元に、前半ではミッドウェー海戦やガダルカナル島戦など、個別作戦での意志決定に焦点を当てて分析しています。後半では、意志決定システムや人事評価プロセス、組織的なノウハウの共有、リソースの蓄積といった具体的な例を米軍との対比を通して分析することで、日本軍の組織的特性を浮き彫りにします。そして明らかになるのは、日本軍は自己革新に失敗した組織であるということです。

本書の結論としては「組織がオープンシステムであること(組織自体の自己革新性がどう確保されているか)こそ、真の創造的組織たりうるかの指標である」というところでしょうか。現在のような既存の常識が大きな意味を持たない状況において、未知の状況に的確に対処できるような組織をいかに作り上げるか、というテーマに関しては、本書の分析が参考になると思います。

組織内でマネジメントする立場にいるかただけでなく、日本の組織というものについて関心のあるすべてのかたにおすすめです。(ISBN4-12-201833-1、中公文庫)

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