音声による情報提供は難しい

2003年1月27日

アクセシビリティに注目が集まっている関係か、音声による情報提供が研究されるケースが増えているようです。もちろん本体よりも大きく重いマニュアルをなんとかしたい携帯電話や、安全上の問題からユーザーが紙面や画面をじっくり読む訳に行かない車載情報システムなど、音声による情報提供に注目せざるを得ない製品が増えつつあることも理由の1つでしょう。

さて音声で情報提供を行う場合ですが、ワンソースマルチユースで対応する場合と、専用コンテンツを用意する場合の2つのアプローチが考えられます。つまり、紙や電子媒体用の通常の文字表現テキストをそのまま利用するのか、それとも音声による情報伝達に最適化したコンテンツを別途用意するのか、ということです。また、すべての情報を音声で提供するのか、それとも音声による情報提供はポイントを絞って必要最小限にとどめ、製品やサービス全体の情報を(紙の冊子やWebサイトなどで)別途提供するのかによっても、音声コンテンツに求められる性質が変わってきます。

ただはっきりしているのは、特に高機能製品の取扱情報を提供するケースにおいて、ワンソース運用では音声情報としてまともに機能させるのは難しいということです。これは何故かというと、(紙にしろ電子にしろ)視覚表現を前提として設計した情報をそのまま流用しても、音声ではうまく機能しないからです。「alt属性の記述など各種アクセシビリティ対策をすることで、音声環境でも同等の使い勝手を提供できる」というような極論を目にしますが、とんでもない話です(もちろん何もしないよりは全然良いのですけれども)。

例えば、操作情報の枠組みは、見出しと導入文、操作文+結果文のセット、サブ情報(ご注意+ヒント)といった要素で構成されます。紙媒体では導入文内の概念説明が過剰だと感じた時点ですぐに飛ばし読みができますが、音声を聞いている場合はどうでしょう? 音声では聞き飛ばし(斜め読み)がしにくいので、情報を必要最小限に絞り込む必要が出てきます。操作説明文であれば、実際の操作説明の前には、見出し(タスクのゴール)と見出しだけで説明しきれないタスクの補足情報、操作前に把握する必要のある重要な制約情報程度に限定する必要があるでしょう。概念説明や補足説明などの既存のマニュアルで重宝される情報に関しては、操作説明が終了したあとに必要に応じて参照できれば十分です。完全な情報を提供する機会を別途用意するのであれば、なおさらですね。

音声による情報提供で一番重要なのは、現在再生されているコンテンツは自分が必要としている情報なのか?を極めて初期の段階で把握できるようにすることです。これは視覚による情報提供では斜め読みで見当がつく場合が多いのに対して、音声ではある程度の量を聞いてみないと見当がつかないためです。ある程度の量を聞く=それだけ時間がかかる訳ですから、この部分をしっかり意識する必要があります。お客様窓口電話番号に採用されることが多くなった自動応答システムで、自分が必要な情報がどれなのかわからなくなって途方に暮れた経験はありませんか?(この話、たぶん何かの機会に続きます)

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