情報大工のひとりごと

情報デザイン業務の周辺で思ったこと、そして考えたこと

検索エンジン最適化と情報設計の狭間で

2004年06月03日

検索エンジンを自社のマーケティングに活用することを目的とした、SEO(検索エンジン最適化)と呼ばれるWebサイトの再構築が流行ってるようですが、以前からちょっと気になっていることがあります。

SEOのプロセスを詳細まで熟知している訳ではないので外している可能性もありますが、検索に使用されるキーワードを意識して情報を構成するという考えかたそのものに、漠然とした不信感があるのです。例えば、Googleでは見出しやリンク部分に含まれる文字列が検索結果に大きく影響する、つまりキーワードの配置場所として効果が高いと言われていますので、その辺を中心に文字情報をコントロールすることがまず重視されることになります。

ですが、そのような文字情報のコントロールによって、Webサイト内を回遊するユーザーへのわかりやすさが損なわれる可能性があります。つまり、キーワードが一般名詞として完全に認知されていない場合は、Webサイト内の情報カテゴリ名やナビゲーションのタイトルにキーワードを使用すると、使い勝手の面で問題が発生する可能性がある、ということです。これは何故かというと、キーワードのような特殊な名称よりも、一般的な言い回しの方が表現としてわかりやすいためです。

また、キーワード重視の姿勢がWebサイト全体の情報設計に影響を及ぼす可能性も出てきます。極端な例ですが、キーワードを元にした情報分類が強制されることで、ユーザーの動機を中心とした情報設計に影響が出る(ユーザーの利益と相反する)ことも考えられます。これらの問題を引き起こさないためにも、「SES(サーチエンジンスペシャリスト)に求められる素質」でも触れられているように、

WebページをSEO施策で改善する際にも、SEO施策後のページが、 ユーザーが見て違和感を感じないページなのか、ユーザビリティの観点からはどうかなど配慮し、SEOのためのSEOにならないようにしなければならない。

japan.internet.com | SES(サーチエンジンスペシャリスト)に求められる素質

ことが非常に重要となってくる訳です。

検索エンジン経由のユーザーが多いというのは、確かにその通りです。ですが、検索エンジンへの最適化が(訪問後の)Webサイト内回遊への足かせになってしまうようでは、目先の訪問者数が増えたところで、総合的に見て得策とは言えないでしょう。そこまで承知の上で検索エンジンへの最適化を優先するのであれば良いのですが、果たしてどこまで理解されているのかは疑問です。現状の検索エンジンからの訪問者を増やすためには仕方がないとはいえ、本末転倒は避けて欲しいところです。

Yahooがページ検索をGoogleから独自エンジンYST(Yahoo Search Technology)に切り替えたことがニュースになりましたが、検索技術の仕組みはほとんど変わっていないようです。これはつまり、本末転倒の最適化が存在する余地がまだまだあるということです。このような問題を解消するためにも、Webサイトの情報設計がユーザーに最適化された状態でも、必要な情報を過不足なくスムーズに入手できる(=表面的な言葉の設定で検索結果が左右されない)検索技術が、一刻も早く登場して欲しいものです。

関連記事(TrackBack)

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YSTとその衝撃(最高のウェブマスター教育を。)
ヤフーがページ検索を新しいエンジンに変えて、すでに4日がたった。 そのことをBlogで発信しているサイトは検索できるだけでもすでに176件になり、単なる紹介(リンク)サイト...(2004年06月04日 08:44)

皆様からのコメント

もちろん対象情報の性格や閲覧コンテクストによってはキーワード直の方が良かったりするでしょうから、「一般的な言い回しの方が表現としてわかりやすい」というのは、あくまで一般論です(念のため)。

ただ、キーワード中心にすると、「どうしても辞書的な情報構成になりがち=対象キーワードを知らないと検索すらできず」、という事態に陥るので、双方のアプローチを併用することが望ましいと思われます。

Posted by: たかやま : 2004年06月03日 04:57

情報検索というと、答を探しているような印象がありますが、実際には、問題を探していることの方が多いかもしれませんね。検索サービスの価値は、後者への対応によって向上するでしょう。

Posted by: うえの : 2004年06月03日 18:37

検索語とキーワードが一致しなくても、「一般的な言い回し」を同義語として登録すれば少しはマシなのかも。実際、それやってる検索エンジンはありますしね。

キーワード列挙で情報の意味が十分に表現できるか?という不安は残りますが・・

できないと言っている言語学者はたくさんいます。だから辞書だと、キーワード列挙のほかに、ことばがどのような条件で使われているかを定義する2通りあるのです。

Posted by: : 2004年06月04日 01:36

■うえのさん
どうもご無沙汰しております。おっしゃる通りだと思います。
検索エンジンの使いかたがなかなか広まらない理由の一つに、「解答可能な問題の形に、自分の疑問を整理できない」こともありそうです。
広い意味で教育の問題なのかもしれませんが、でも誰だって自分に不慣れな領域ではそのような問題を抱えてしまう訳で…。
こういう部分をサポートするためのIA(笑)なんでしょうけれども、検索エンジン側の進化も期待したいですね。

■林さん
いつもありがとうございます。
最近増えてる揺らぎ対策ということでは、 gooに続き、今回のYahooでも対策しているようです。
でも「一般的な言い回し」まで拡大すると、バリエーションがかなり増えませんか?「キーワード列挙で情報の意味が十分に表現できるか?」の対策まで表現に込めると、なおさら幅が拡がってしまうみたいな感じで。
いや、もちろんそれだけでもかなりマシになると思いますけど。

あと、なんか最後が切れてしまっているっぽいので、できれば「2通り」の解説をして頂けると嬉しいです。

Posted by: たかやま : 2004年06月04日 17:23

返事が遅れてすみません。風邪引いてしまいました・・

>>「一般的な言い回し」まで拡大すると、バリエーションがかなり増えませんか?

同感です。後で管理するのが大変そう。どこまで細かくキーワードを作るかはプロジェクトの性質次第ではないでしょうか。

>>できれば「2通り」の解説をして頂けると嬉しいです。
例えば、猫ということばでも、猫に引っかかれた人と猫愛好家ではことばに対する意味が違ってきます。

ことばの内容的部分(意味)は、人間の精神活動に関係するところが多く、具体的な対象性を持たないため、つかみ所がないのです。ことばの研究も音声に比べると、意味の研究はだいぶ遅れています。

ことばの意味は「その人の経験とか知識の総体」で、ことば自体はその「上澄み」みたいなものです。だから、ある一語を他の近縁類似のことばとの相互関係を構造的に捉えないと意味を表現することはできません。これがオントロジー的なアプローチです。

例えば、日本語で「のむ」って単語ありますよね。「ジュースをのむ」、「コーヒーをのむ」、「薬をのむ」、「タバコをのむ」など。

辞書だと英語のDrinkに対応することばをよく「のむ」にします。しかし、薬をのむときにDrinkは使いませんし、同様にタバコをのむときはSmokeです。また、本来飲み物ではない液体(ライターオイルとか)の注意書きをみると、Fatal, if swallowedで、Fatal, if drunkではありません。

どの英単語を取ってみても、日本語の「のむ」を十分に表現したとはいえないでしょう。
じゃあ、「のむ=Drink,Smoke,Take,etc」とキーワード列挙をすればいいのかというとそううまくはいきません。

ある特定の一語に対して、多くのキーワードを羅列的に対応させていくと、そのことばを安心して使える範囲はたしかに大きくなります。しかし同時に、不適当な一般化の危険も、どんどん広がってしまいます。このようなキーワード列挙、置き換え方式は、いわゆる意味の説明を一段延期しただけです。

そこでおこなわれている方法は、キーワード列挙ではなく、ことばの定義をすることです。Drinkを「人の体を維持するのに役立つような液体を、口を通して体内に取り入れる行為」とすれば、すべてのDrinkの正しい使い方をあます所なく取り入れることができます。日本語ののむも、「何かを、口を通して、かまずに、体内に摂取すること」とすれば、例えば、ご飯をかまずにのむといった表現が可能になります。

/////
ことばのアプローチが情報設計にそのまま使えるとは思いません。キーワード列挙も完全では無いにしろ情報検索性をあげることは間違いありません。

ただ、情報の意味をキーワード列挙で表現できないことは確かです。キーワードをやみくもに列挙しだだけでは、意味の表現はできないでしょう。ユーザーが情報をどのような条件下で使うのか検討したうえで、その条件に当てはまるキーワード列挙をすればいいのかなと思っています。

/////
人のブログで退屈な話(しかも長い!)をしてしまって恐縮です。

Posted by: : 2004年06月06日 06:59

しかも日本語破綻してるし・・

>>だから、ある一語を他の近縁類似のことばとの相互関係を構造的に捉えないと意味を表現することはできません。


ある一語は他の近縁類似のことばと密接な相互関係に立っています。そこでこの関係を構造的に把握しないといけません。

Posted by: : 2004年06月06日 07:10

SEOに関してはずぶの素人なので何もいえないのですが、だんだん変な傾向になりつつあるのは事実ですね<SEO周り
ただある意味、そういった情報の構造なり中身の文脈なりもきっちり作業しないとダメだよという傾向はいいことだと思っています。<受注会社にとっても
いつまでも見た目重視のブロシャーデザイン撲滅の一歩には丁度いい?(w

ちなみにYST(Yahoo! Search Technology)については米国関係者から耳にした情報だと、検索結果や検索エンジンそのものではなくYahoo!が提供しているサービスとの連携があってはじめて効果がでるテクノロジーなので検索エンジンだけ採用してもポアな感じだそうですが(^^;)

Posted by: : 2004年06月06日 23:37

■林さん
長文フォローをありがとうございました。
私的には予想通りだったのですが、お読みになっている方で疑問をお持ちの方がいらっしゃるだろうな、と思ったもので。
詳細な説明、助かります。フォローをお願いした甲斐があったというものです(笑)

■ささん
構造なり中身の文脈のデザインってその通りなんですが、なんか言葉がヘンに先走っているような気がして…。
伝えるべき情報って本当に構造化すると伝わりやすいんだろうか?とかゆー疑いの目も持ちつつの作業でないとダメな部分ってありません?
結局のところ、ユニバーサルの観点からは視覚依存じゃダメだろというのは踏まえた上でも、最終的な視覚表現抜きの構造的なわかりやすさなんて(個人的には)存在しないと思ってるんですが、なんかその辺がデータ的な構造重視に行きすぎると問題が出てくるような気がしてますです。

#ってこんなことは「さ」さんには言うまでもないことでした〜。

Posted by: たかやま : 2004年06月11日 18:22

自己レス:
「最終的な視覚表現抜きの構造的なわかりやすさなんて(個人的には)存在しない」というのは、結局最終的な表現を考えた上で構造を定義したり、表現に合わせて情報内容をコントロールする面も多分にある、つまり情報設計がプロセスとしては優先されるけど実際には…ということです。

Posted by: たかやま : 2004年06月11日 23:00

>> 詳細な説明、助かります。フォローをお願いした甲斐があったというものです(笑)

こちらこそお役に立てて、光栄です。

Posted by: : 2004年06月13日 07:57

つまり、情報伝達におけるメディアの特性と、コンテンツは、不可分であるということですかね。純粋すぎるメタデータには、あまり価値がないというか。

Posted by: うえの : 2004年06月14日 19:55

はい、そんな感じです > うえのさん
この辺はいろいろと議論になりそうですけど(笑)

教条主義に走らずに良い議論になればいいのですが、このテーマはなかなか難しいですね〜。

Posted by: たかやま : 2004年06月17日 00:23

When people are saying something, that you don’t like, don’t argue with them, just stop paying attention

Posted by: hans : 2008年04月07日 05:34

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