細かいバタバタを乗り切って一段落したこともあり、携帯電話に関する新規エントリを投入しようと準備していたのですが、あまりの分量の多さに研究発表送りとなりそうです(久し振りの追加となりそうです...)。という訳で、以前からまとめておこうと思っていた「マニュアルの操作手順説明書からの脱却に必要な観点」について、少し書いてみようかと思います。業界的には以前から問題になっているのですが、解決に向けてのアプローチが少しズレていると感じることが多々ありますので。

マニュアルにおける操作手順説明には、以下の情報を含むのが基本です。

  • 見出し
  • 導入情報:機能概要やユーザーメリット、具体的な用途(想定利用シーン)、基本的な制約条件など
  • 操作手順情報:操作行為やデバイス側からのフィードバックなど
  • 注意情報:「〜してはならない」「〜できない」など、必須の付加情報
  • 補足情報:「〜してもよい」「〜することもできる」など、任意の付加情報

現在多くのマニュアルには「操作手順情報や注意情報、補足情報だけが手厚過ぎる」、要するに「導入情報が極端に薄い」という問題があります。確かに操作手順情報がマニュアルの本命であることは事実ですが、導入情報が薄いとユーザーによる機能認知を向上させられない、機能利用モチベーションを喚起できないという問題が発生します。また、大きなイラストを中心とした導入情報が存在しないため、マニュアルのどのページも同じような操作説明ばかりで紙面にメリハリがなく、マニュアル嫌いを増やす一因となっているように思えます(携帯電話のマニュアルが典型例です)。

したがって操作手順説明書からの脱却を考えるのであれば、まず「これは何?どんな良いことがある?」というユーザーメリットの訴求強化(=導入情報の強化)を検討すべきです。ポジティブなユーザー体験の獲得を目指すのであれば、まずは製品を使ってもらう&マニュアルを読んでもらうことが大前提となるため、ユーザーメリットの訴求もシンプルに行うことが必要となります。それと同時に、メーカーの自己満足になりがちな複数手段の説明(例:PC上でのアプリケーション起動方法を何通りも説明する)や重要度の低い補足情報などを、ばっさり削除するくらいの決断が必要でしょう。

また、マニュアル中でユーザーメリットの訴求強化に目を向けるということは、(長期的には)製品企画・設計の段階でより具体的な活用事例を考慮するようになるという、副次的な効果も期待できるのではないでしょうか。マニュアル制作の段階で具体的な使用シーンについて質問された時にしどろもどろになる場合、困るのはマニュアル制作者よりもむしろ実際に製品を購入するユーザーです。何故かって、その製品はしどろもどろになるようなレベルでの想定・作り込みしかされていないということですからね。

ただこの方向で脱却を目指すのであれば、決して忘れてはならない観点があります。それは操作体系のスリム化やデバイス側への操作情報の埋め込みなど、マニュアル内での操作手順情報の位置付けをできるだけ軽くするための対策が並行して行われる必要がある、ということです。そうでなければ単に分厚いマニュアルができるだけですからね。マニュアルの「操作手順説明書からの脱却」を目指すのであれば、製品開発初期段階からの密接な協業が必要な訳で、最終段階で「マニュアルに詰め込んどけばOKでしょ」というのはナシでお願いしたいものです(笑)

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