マニュアルのデザインは軽視される一方

2002年3月25日

最近の制作現場では、制作効率が優先されるあまりに、デザインに対する制約がかなり厳しくなってきています。

制作に使用するアプリケーションソフトはメーカーから指定されるのが常ですが、生産性向上という名目でソフトを変更することが最近多いのです。そのせいもあって、デザイン面での裁量の余地がかなり狭くなってきています。裁量余地が狭いということは、逆に工夫するための腕の見せ所という面もあることも確かなのですが、例外的でトリッキーな処理を多用すると、そもそも生産性向上を期して導入した制作プラットフォームの意味がなくなってしまうため、なかなかうまくいかないのが現実です。生産性重視のアプリケーション導入を強いる一方で、例外処理を多用したデザインを求める「?」なメーカーもありますが、そうした「わかってないなあ」という担当者を抱えているところも多いようです。

こうした縛りを別にしても、そもそもマニュアルのデザインを理解し、適切に評価できる人が少なくなってきていることも大きな問題です。「コスト制限による紙面の最大活用が要請される」といえば聞こえが良いものの、要するに単なる詰め込みレイアウトが主流になってきたあたりから、この傾向が強くなっているようです。全体のレイアウトバランスという大きな部分から、ディテールの見せかたといった細かい部分まで、デザインの話がわかる(できる)担当者がかなり少なくなってきています。以前にも取り上げたように、低レベルのデザインに慣れてしまったせいか、まともな評価がなされていない(というか、できない)状態です。

これではデザイナーの能力など正当に評価される訳もなく、デザイナーは実際のところDTPオペレーター扱いされていることが多いようです。当然業務へのモチベーションなど維持できるはずもなく、マニュアル制作の世界を離れていってしまうというわけです。お約束とは言え、優秀な人こそ、この傾向が強いのが頭の痛いところです。ある程度替えの効くライターと違って、しっかりしたデザイナーは替えが効かない人材なのですから、できるデザイナーはくれぐれも大切にしたいものです。

この辺の話は前から思っていたのですが、とあるメーカーの結構良いデザインをするデザイナーさんが別部署に異動してしまったという話を聞いて、あらためて実感した次第です。

The 1140px CSS Grid System · Fluid down to mobile