説明対象を理解することが軽視されていないか

2006年12月25日

以前某所に書いたことを、清書・増補する形でこちらにも。

ここ数年の仕事で、改めて痛感したことがあります。マニュアル制作の場合、これまでも説明対象(製品とかサービス)がどんどん専門化・高度化・複雑化している印象はありましたが、ここ数年の製品は特に危険なレベル(謎)に突入しているように感じます。

というのは、新しい概念や機能をユーザーに説明する以前に、それらをまず自分で理解するために必要な前提知識の範囲が拡がり過ぎているように思えるからです。最新機能を理解するには、機能そのものを表面的に理解するだけではダメで、周辺技術やレガシー技術を含む、技術的な経緯に対する理解という土台が必要なことが多いのです。特に「以前と比較して〜です」ということを説明する必要がある場合などは、目も当てられません(笑)

製品理解という問題に対しては、例えば以下のような枠組み

  • 基本的な操作フローの概念
  • 各機能の内容とコンテクスト
  • 各機能の相互関係/制約事項
  • 個別コントロール/オブジェクトの挙動

を利用することもできますが、これだけでは表面的な操作手順説明書を仕上げるので精一杯です。もう一歩踏み込んで理解できないと、製品情報をユーザーの視点で組み替えて提供する、というところまで到達できません

マニュアル制作に関連する「最新情報についていけなくて大変だ」という話題は、制作ツールのバージョンアップに伴うソフトウェアの使いこなしに代表されるように、制作技術や制作プロセスの問題に収束しがちです。ですが、説明対象の専門化・高度化・複雑化そのものについても、改めて目を向けて行く必要があると感じています。

さてここでいきなり話は変わりますが、この辺の問題についてWeb屋さんはどう感じているのか、非常に興味があります。

コンテンツの制作に当たっては、制作技術の問題以外に、説明対象をどう理解するのかという問題にブチ当たるはずです(例えば、金融商品系のコンテンツなど大変そうです)。通常のいわゆる情報設計/IAと呼ばれるプロセスでも、この辺の問題を避けて通ることはできません。何故なら対象をしっかり理解することなしに、情報設計などできるはずがないからです。分野は違いますが、業務システムを開発されるエンジニアの方は、対象業務について一生懸命勉強されますよね(たぶん)。

もちろんこの辺の地道な問題に対して真摯に取り組んでいる方も多いとは思うのですが、コンテンツ(情報)そのものにどう向き合っていくか?という話がWeb屋さんの議論には全然出てこないように見えるのです。「先方支給」の一言では済ますことのできない世界だと思うんですが、どうなっているものやら、不思議に感じる今日この頃です。

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